レポートガイドライン
「ライフログ」という言葉が最近、携帯電話市場でもよく囁かれるようになりました。背景には、「携帯電話」という生活に密着した端末の特異性が挙げられます。ユーザーに常について回り、その行動をある程度の精度で記録していく必要がある場合、携帯電話はまさに現代の生活環境において最もその役割を期待される携行デバイスと言えます。事実、携帯キャリア国内最大手のNTTドコモからは2008年末、ライフログをサービスに活用したエージェント型ビジネスも登場しました。KDDIは2009年からの類似サービスのベータ版開始を発表しています。
今後、おそらくライフログ・ビジネスは携帯電話機を中心に商業化が進むと考えられますが、一方で将来的なユビキタス社会の中でライフログが収集されるためには、端末だけでなく社会面でのインフラ整備や規制緩和策等が必要不可欠となっていくでしょう。また、ライフログをベースとした有益情報の推測配信などに至っては、さらなる技術進化も必要と思われます。鳴り物入りで注目が集まっている携帯のエージェント型サービスも、中長期的に見ればそのサービスの態様も今後大きく変化していくことが予想されます。
ROA Groupでは、携帯電話機ベースのキャリア中心型ビジネスモデル、もしくはコンテンツ事業者主導型のビジネスモデルを「ライフログ・ビジネス」として捉え、今後のビジネス成長の可能性について検証するために本レポートを執筆しました。そのため、ライフログ収集端末および情報配信先端末を携帯電話として想定したケースを前提に複数の推定を試み、かつキャリアとのヒヤリングを参照しながら市場規模の算定を試みました。市場規模は、ユーザーが支払うB2Cサイドの分野と広告主とプロバイダーで契約を成立させるB2Bサイドの分野に分けてそれぞれ金額ベースで算出を行いました。
◆調査手法
市場規模の予測においては、下記項目を主に主要変数と捉え、ROA Groupの保有するデータベースや公官庁の公表数値などを参考にしながら推測値を設定し、最終的にはキャリアの思惑などを加味しながら市場規模を概算しました。
B2Cサイド
・携帯加入者数のうち、ライフログをベースとしたエージェント型サービス加入件数を年別推定
・有料情報配信のための平均ユーザー支払額を推定
B2Bサイド
・モバイル広告市場の市場予測を推定
・同市場に占めるライフログをベースとしたプラットフォームの利用率を年別推定
[図]携帯電話機ベースのライフログ・ビジネス市場規模予測(2009〜2015年) ![[図]携帯電話機ベースのライフログ・ビジネス市場規模予測(2009〜2015年)](http://shop.ns-research.jp/img4/roa090223.gif)
Source: ROA Group
B2Cサイドでは、主にユーザーがエージェント型サービス等の利用に伴う月額料金および一部の有料情報が含まれます。一方のB2Bサイドでは、コンテンツ事業者または一般広告主がマーケティングや広告宣伝のために、キャリアもしくは同様の推測情報配信サービスを提供するプロバイダーに支払うモデルを想定しており、ユーザーには無料のサービスとなります。このライフログをベースとした情報配信サービスやマーケティングが主流となっていけば、既存のモバイル広告市場の多くの金額規模がこのプラットフォームに移行すると予想されます。
ライフログ・ビジネスは、入口には比較的簡単に立つことができ、参入も比較的容易です。しかし、同業他社の中で競争優位性を出していくには、サービスの範囲や質において非常に深い見識と仕掛けが必要になってきます。それ相応の時間と資金の投入は不可欠である一方で、使えば使うほど精度が向上するのであれば、ユーザーの囲い込みがしやすい意味でスピード感も求められます。
昨今の端末・サービスプラットフォームのオープン化のうねりの中、わが国特有のキャリア主導による垂直統合型モデルが衰退し、キャリアは本来の「土管」としてのインフラ業務のみに回帰するとの見方もあります。しかし、ライフログをベースとした蓄積型サービスモデルを提供できる最も近い立ち位置にいるのがキャリアであるならば、垂直統合型モデルは今後もいい形で生き残っていく可能性は高いでしょう。本レポートでは、オープン化を食い止めるキャリアの施策としてのライフログ・ビジネスについても分析しました。今後の皆様のビジネス展開に示唆を与えられる内容として評価されれば幸いです。
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